爬虫類の飼い主様へ|卵詰まりは命に関わる危険な病気です
「最近食欲が落ちている」「お腹が張っている」「穴を掘るのに卵を産まない」などの症状に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
爬虫類の卵詰まりは、メスに起こる時には緊急度の高い病気です。放置すると命を落とすケースもあります。特にクサガメ、ヒョウモントカゲモドキ、フトアゴヒゲトカゲ、リクガメなどで動物病院への受診相談が増えています。
爬虫類は体調不良を隠す動物です。飼い主様が異変に気付いた時点では、重症化しているケースも少なくありません。
今回のコラムでは、爬虫類を診療対象とした動物病院として、原因、症状、治療法、予防法、受診の目安について詳しく解説します。
目次
卵詰まりとは
爬虫類の卵詰まりとは、メスの爬虫類が卵を体内で正常に産めなくなる状態です。医学的には「卵塞」や「卵停滞」と呼ばれます。
爬虫類の卵詰まりは、クサガメ、ヒョウモントカゲモドキ、フトアゴヒゲトカゲ、カメレオン、ボールパイソン、リクガメなど、多くの種類で発生します。
爬虫類の卵詰まりには、大きく分けて2種類あります。
爬虫類の卵詰まりの種類
1つ目は「閉塞性卵詰まり」です
閉塞性卵詰まりでは、卵が大きすぎる、変形している、骨盤が狭いなどの理由で卵が物理的に出られなくなります。
2つ目は「機能性卵詰まり」です。
機能性卵詰まりでは、カルシウム不足や体力低下によって産卵する力が弱くなります。
飼育相談でも、カルシウム不足による爬虫類の卵詰まりは非常に多く見られます。
卵詰まりが起こりやすい種類
爬虫類の卵詰まりは、特定の種類で特に多く発生します。
ヒョウモントカゲモドキ
ヒョウモントカゲモドキは爬虫類の卵詰まりが非常に多い種類です。
若齢個体や痩せている個体で卵詰まりが起こりやすくなります。
比較的小型種のため、卵が少し大きいだけでも産卵できなくなるケースがあります。
当院でも、「2週間以上食欲がない」「シェルターから出てこない」という症状で受診したヒョウモントカゲモドキが、レントゲン検査で卵詰まりと診断されたケースがありました。
フトアゴヒゲトカゲ
フトアゴヒゲトカゲの卵詰まりは、産卵床不足で発生しやすい特徴があります。
産卵数も多く、柔らかい土を掘って産卵する習性があり、産卵環境が整っていない場合、産卵を我慢してしまうことがあります。
結果として、爬虫類の卵詰まりが悪化するケースがあります。
カメの卵詰まり
カメの卵詰まりでは、食欲低下と活動性の低下が目立ちます。
ミズガメは特に多数の卵を長期間抱え込むケースがあります。
ヘビの卵詰まり
比較的詰まりにくい傾向はありますがボールパイソンやコーンスネークなどのヘビでも卵詰まりが発生します。
定期的に複数回産卵を繰り返す事で産卵しづらくなり、腹部が不自然に膨らむなどの症状が見られます。
体の脱水が関係するケースもあります。
卵詰まりの主な原因
爬虫類の卵詰まりは複数の原因が重なって起こります。
カルシウム不足
カルシウム不足は、爬虫類の卵詰まりの代表的な原因です。
卵管の収縮力が低下した結果、結果として、爬虫類が卵を押し出せなくなります。
特に昆虫食の爬虫類では、カルシウム剤の添加不足も問題になります。
コオロギのみでは栄養バランスが崩れやすくなります。
紫外線不足
紫外線不足も爬虫類の卵詰まりに深く関係します。
爬虫類は紫外線を浴びることでビタミンD3を作ります。ビタミンD3はカルシウム吸収に必要です。
紫外線ライトを長期間交換していないケースでは、紫外線量が不足します。
見た目が光っていても、紫外線が出ていない場合があります。
低温環境
爬虫類は変温動物のため、環境温度に強く影響を受けます。
温度不足では消化機能や筋肉機能が低下します。
結果として、爬虫類の卵詰まりが起こりやすくなるため、温度管理も重要です。
産卵床不足
産卵場所がないことも大きな原因です。
爬虫類は安全な場所を探して産卵します。狭いケージや硬い床材では、爬虫類が安心して産卵できません。
フトアゴヒゲトカゲやカメレオン、カメでは特に重要です。
卵詰まりで見られる症状
爬虫類の卵詰まりでは、さまざまな症状が見られます。
食欲低下
爬虫類の卵詰まりでは、食欲低下が非常に多く見られます。
卵が腹部を圧迫するため、消化管が潰されてしまい食べにくくなります。
「食事量が減ってきた」という状態も初期症状です。
腹部膨満
腹部の膨らみは重要な症状です。
種類によっては、お腹に白い卵が透けて見える場合があります。
腹部が硬くなるケースもあります。
落ち着きがない
産卵前の爬虫類は穴を掘る行動をします。
しかし卵詰まりになると、長時間掘り続けても産めません。
ケージ内を歩き回る行動が増えるケースもあります。
元気消失
重症化した爬虫類の卵詰まりでは、ぐったりする症状が見られます。
脱水なども相まって目を閉じる時間が増えるケースもあります。
後肢麻痺
重度の卵詰まりでは、神経圧迫が起こる場合があります。
後ろ足が動かなくなるケースもあります。
爬虫類の卵詰まりを放置するとどうなるのか
爬虫類の卵詰まりは放置してはいけません。
卵の破裂
体内で卵が割れるケースがあります。卵黄が腹腔内に漏れると、重度の炎症が起こります。
腹膜炎は命に関わる危険な病気です。
敗血症
炎症が進行すると細菌感染が起こります。
細菌が全身へ広がると敗血症になり、死亡率が高くなります。
臓器圧迫
大きな卵は内臓を圧迫します。
消化管や肺が圧迫された結果、呼吸が苦しくなる場合もあります。
体力低下
長期間食べられない状態では、爬虫類の体力が急激に低下します。
脱水が悪化し、手術リスクも高くなります。
卵詰まりの検査方法
触診による確認
腹部を優しく触ることで卵を確認できる場合があります。
しかし無理な圧迫は危険なため家庭で強く触る行為は避けてください。
レントゲン検査
レントゲン検査は非常に重要です。
卵の数や大きさ、骨格異常の有無も確認できます。
当院でも爬虫類の卵詰まり診断ではレントゲン検査を多く行います。
超音波検査
超音波検査では軟部組織を確認できます。
殻のない状態の卵や卵胞の確認に有用です。
血液検査
カルシウム値の確認を行う場合があります。
脱水や感染状態の評価にも役立ちます。
卵詰まりの治療法
爬虫類の卵詰まりでは、状態に応じた治療が必要です。
内科治療
軽度の爬虫類の卵詰まりでは、内科治療を行います
カルシウム剤投与や輸液による脱水改善も重要です。
適切な環境が整うと自然産卵するケースもあります。
用手摘出
卵が総排泄孔近くにある場合、慎重に摘出する場合もあります。
無理な圧迫は卵破裂につながるため専門的な判断が必要です。
外科手術
重度の爬虫類の卵詰まりや卵胞鬱滞に陥ったケースでは手術が必要になります。
卵管切開や卵巣卵管摘出を行います。
手術後は入院管理が必要になるケースがあります。
卵詰まりを予防する方法
爬虫類の卵詰まりは予防が非常に重要です。
適切な紫外線管理
UVBライトは定期交換や照射距離を適切に保つことが必要です
多くの製品では6か月から12か月で交換が推奨されているため交換時期を見誤らないことが重要です。
ガラス越しでは紫外線量が低下します。
カルシウム補給
昆虫へのダスティングを行いましょう。カルシウム剤を定期的に添加してください。
栄養バランスの良い食事が重要です。
温度管理
種類ごとの適温維持が必要です。ホットスポット温度も含め温度勾配が重要です。
産卵床設置
湿った土やヤシガラ、バーミキュライトなどを使用します。
体が入る十分な広さで安心できる暗い場所を作りましょう。
種類によって広さや土の硬さの好みが異なるため微調整してあげる必要があります。
動物病院を受診する目安
次の症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
1週間以上食欲が低下している
爬虫類の長期の絶食は危険なため、特に産卵行動が見られる場合は注意が必要です。
お腹が張っている
腹部膨満は重要なサインです。
急激な膨らみでは緊急性があります。
穴掘り行動が続く
産卵場所を探している可能性があります。
産めない状態が続くと卵詰まりが疑われます。
爬虫類の卵詰まりにお悩みならご相談ください
爬虫類の卵詰まりは、早期発見と早期治療が非常に重要です。
「少し元気がないだけ」と思っていたケースでも、重度の卵詰まりが見つかる場合があります。
特にミズガメやヒョウモントカゲモドキ、フトアゴヒゲトカゲでは注意が必要です。
花咲く動物病院では、犬猫だけではなくエキゾチックアニマル診療にも力を入れています。
爬虫類の卵詰まりに対して、飼育環境確認、レントゲン検査、内科治療、外科治療まで幅広く対応しています。
大切な爬虫類が安心して生活できるよう、飼い主様と一緒にサポートいたします。
該当する症状があればお気軽にご相談ください。


