犬・猫の飼い主様へ|フィラリアの生態を解説いたします
犬・猫の飼い主様で、「フィラリアはどんな虫なの?」「蚊に刺されるだけで、どうして心臓や肺の病気になるの?」「フィラリア予防薬は何を防いでいるの?」と疑問に感じたことはありませんか?
フィラリアは、犬や猫の体内で成長する寄生虫です。
犬フィラリア症の原因となる犬糸状虫は、成虫になると主に肺動脈に寄生します。犬の体内で成長した雌成虫は、ミクロフィラリアと呼ばれる小さな幼虫を血液中に放出します。ミクロフィラリアを持つ犬を蚊が吸血すると、ミクロフィラリアが蚊の体内へ移動します。蚊の体内で幼虫が成長すると、別の犬や猫へ感染する準備が整います。
つまり、フィラリアの生態を理解するためには、「犬・猫」「蚊」「ミクロフィラリア」「感染幼虫」という4つの関係を知ることが大切です。
この記事では、フィラリアの生態をできるだけ分かりやすく解説します。
目次
フィラリアの生態とは?
フィラリアの生態を一言で説明すると、蚊を介して犬や猫の体内を移動しながら成長する寄生虫です。
犬フィラリア症の原因となる犬糸状虫は、犬を重要な宿主として利用します。犬の体内では成虫が成長して繁殖し、ミクロフィラリアが血液中に存在するようになります。ミクロフィラリアだけでは、犬から別の犬へ直接感染することはできません。蚊の体内で感染能力を持つ幼虫へ発育する段階が必要になります。
この仕組みが、フィラリアの生態で最も重要なポイントです。
「フィラリアに感染した犬の近くにいるだけで感染する」という病気ではありません。フィラリアの感染には、感染動物と蚊の両方が関係します。
フィラリアの生態で重要な「犬・蚊・幼虫」の関係
フィラリアの生態には、犬の体内だけで完結しない特徴があります。
犬の体内で成長したフィラリアは、ミクロフィラリアを血液中へ放出します。蚊が感染犬を吸血すると、蚊がミクロフィラリアを取り込みます。ミクロフィラリアは蚊の体内で発育し、感染幼虫となります。感染幼虫を持つ蚊が別の犬を吸血すると、感染幼虫が犬の体内へ入ります。
フィラリアの生態①|感染した犬の血液にミクロフィラリアが存在する
犬の体内で成長した雌のフィラリア成虫は、ミクロフィラリアを産生します。
ミクロフィラリアは成虫のような大きな寄生虫ではありません。血液中を循環する非常に小さな幼虫です。
感染した犬の血液を蚊が吸血すると、ミクロフィラリアが蚊の体内へ入ります。ミクロフィラリアは、次の犬へ感染するために蚊を利用します。
フィラリアの生態②|蚊の体内で感染幼虫へ成長する
蚊の体内に入ったミクロフィラリアは、そのままでは新しい犬へ感染できません。
蚊の体内で幼虫の発育が進み、第1期幼虫、第2期幼虫を経て、第3期幼虫、いわゆるL3と呼ばれる感染幼虫になります。感染幼虫へ発育するまでの期間は、目安として10~14日程度です。気温などの環境条件によって発育速度は変化します。
つまり、蚊は単なる「運び屋」ではありません。
蚊はフィラリアの幼虫が感染能力を獲得するために必要な重要な媒介者です。
フィラリアの生態③|感染幼虫が蚊から犬へ入る
感染幼虫を持った蚊が犬を吸血すると、L3幼虫が吸血部位から犬の体内へ侵入します。
感染幼虫は犬の皮下組織などで成長します。犬の体内では第4期幼虫などへ発育し、その後さらに成長して成虫へ近づきます。感染してから成虫になるまでには、およそ6か月以上の時間がかかります。
この時間差が、フィラリア予防を理解するうえで重要です。
蚊に刺された直後に成虫が心臓や肺動脈へ寄生するわけではありません。幼虫が成長する前の段階を対象として予防薬を使用することで、成虫になることを防ぎます。
フィラリアの生態|犬の体内で幼虫はどう成長する?
犬の体内へ侵入したフィラリア幼虫は、皮下組織などを経由しながら発育します。
犬糸状虫では、感染幼虫であるL3が犬の体内へ侵入した後、第4期幼虫の段階を経て成長します。その後、未成熟な成虫へ発育し、最終的に肺動脈などへ移動します。
成虫になるまでに時間がかかるため、感染直後には飼い主様が異常に気付けないことがあります。
フィラリアの生態|成虫は主に肺動脈に寄生する
「フィラリアは心臓にいる虫」と説明されることがあります。
実際には、成虫は主に肺動脈に寄生します。寄生数が増えると肺の血管や心臓に負担がかかり、咳、運動を嫌がる、疲れやすい、食欲低下、体重減少などの症状につながることがあります。重症になると、腹水などが見られることもあります。
犬フィラリア症は、成虫が存在することだけが問題ではありません。
フィラリアが長期間寄生することで、肺の血管や心臓に継続的な負担がかかることが問題です。犬の成虫は5~7年程度生存することがあり、長期間の感染が犬の体に影響する可能性があります。
フィラリアの生態|犬では感染がどのように繰り返される?
フィラリアの生態を理解すると、予防を毎年続ける理由も分かります。
感染した犬の体内に成虫が存在すると、雌成虫からミクロフィラリアが産生されます。蚊が感染犬を吸血すると、ミクロフィラリアが蚊へ移ります。蚊の体内で感染幼虫が発育し、別の犬へ感染します。感染した犬の体内で成虫が育つと、再びミクロフィラリアが血液中へ放出されます。
この循環がフィラリアの生態の基本です。
特に注意したい点は、フィラリアは一度の感染だけで終わる病気ではないことです。
予防をしていない犬が何度も蚊に刺されると、複数回の感染機会が生じます。感染が積み重なることで、体内の寄生虫数が増える可能性があります。
フィラリアの生態|猫のフィラリアは犬と何が違う?
フィラリアは犬だけの病気ではありません。
猫も蚊を介して犬糸状虫に感染することがあります。ただし、猫は犬とは異なる宿主であり、犬よりもフィラリアが成虫まで成長しにくい特徴があります。
猫では、成虫が存在する場合でも1~3匹程度であることが多く、血液中のミクロフィラリアが見つかりにくいことがあります。猫では成虫だけでなく、成虫になる前の幼虫に対する体の反応が肺の病気につながることがあります。
フィラリアの生態|室内飼いの猫でも注意が必要
「猫は完全室内飼育だからフィラリアは関係ない」と考える飼い主様もいます。
しかし、蚊が屋内へ侵入する可能性はあります。猫がベランダや庭に出ない場合でも、蚊による感染リスクを完全にゼロにすることはできません。
猫のフィラリア症は、犬より診断が難しいことがあります。猫では感染していてもミクロフィラリアが血液中に少ないことがあり、一般的な検査だけでは感染を確認できないケースがあります。
猫のフィラリア予防については、生活環境や年齢、体重などを踏まえて動物病院で相談することをおすすめします。
フィラリアの生態|なぜフィラリア予防薬は毎月必要なの?
フィラリア予防薬について、「蚊を殺す薬」と考えている飼い主様がいます。
フィラリア予防薬の主な目的は、蚊から犬や猫の体内へ入った幼虫が成長する前の段階を対象にすることです。農林水産省の資料でも、犬糸状虫の予防薬には複数の有効成分や剤形があり、獣医師の指示のもとで使用することが重要とされています。
そのため、予防薬は決められた間隔で使用する必要があります。
「先月は飲ませたから今月は休んでも大丈夫」と自己判断すると、予防が途切れる可能性があります。
フィラリアの生態から分かる「予防薬を忘れてはいけない理由」
フィラリアの幼虫は、犬の体内に入った後も時間をかけて成長します。
予防薬は、感染した幼虫が成長する前の段階を対象として使用されます。予防薬を予定日に使用しなかった場合、予防できるはずだった感染幼虫が成長する可能性があります。
そのため、毎月の投薬を習慣にすることが大切です。
投薬日をカレンダーに登録したり、スマートフォンに通知を設定したりすると、投薬忘れを減らせます。
フィラリアの生態|予防前に検査が必要なのはなぜ?
フィラリア予防薬を始める前には、動物病院で検査を行うことがあります。
理由は、すでに感染している犬に対して、自己判断で予防薬を使用することを避けるためです。農林水産省の資料でも、感染犬への使用については適切な処置を行い、獣医師の判断のもとで予防を実施することが示されています。
動物病院では、血液検査などを用いてフィラリア感染の有無を確認します。
特に前年の予防が途中で終わってしまった場合や、薬を何回か飲み忘れた場合は、自己判断で予防を再開せず、動物病院へ相談してください。
フィラリアの生態|「去年は大丈夫だった」だけでは安心できない理由
「去年の検査が陰性だったから今年も大丈夫」と考えることはできません。
前年の検査結果は、検査を行った時点での感染状況を確認するものです。フィラリアの感染リスクは、その後の蚊との接触や予防状況によって変化します。
また、フィラリアは感染してから成虫が成熟するまでに時間がかかります。感染初期には検査で確認しにくい時期もあるため、予防薬を適切に継続することが重要です。
フィラリアの生態|こんな飼い主様は動物病院へ相談してください
フィラリア予防について、次のような状況がある場合は動物病院へご相談ください。
- フィラリア予防薬を何回か飲ませ忘れた
- 予防薬を吐き出してしまった
- 予防薬を飲ませたか分からなくなった
- 前年の予防期間が途中で終わった
- 新しく犬を家族に迎えた
- 保護犬を迎えた
- 猫のフィラリア予防について知りたい
- 室内飼育だから予防が必要なのか迷っている
- 予防薬の種類を変更したい
- 咳や疲れやすさなど気になる症状がある
特に、予防薬を飲み忘れた場合は、飼い主様だけで判断せずに相談することをおすすめします。
予防薬には複数の種類があり、対象となる寄生虫、投与方法、投与間隔などが異なります。犬や猫の年齢、体重、健康状態、生活環境を確認して、適した予防方法を選択することが大切です。
フィラリアの生態を知ると、予防の意味が分かります
フィラリアの生態は、少し複雑に感じるかもしれません。
しかし、ポイントは4つです。
1つ目は、感染した犬の血液中にミクロフィラリアが存在することです。
2つ目は、蚊がミクロフィラリアを吸血することです。
3つ目は、蚊の体内で感染幼虫へ成長することです。
4つ目は、感染幼虫を持った蚊が犬や猫を吸血することで新しい感染が起こることです。
フィラリアは、感染してから症状が出るまで時間がかかる場合があります。
犬では成虫が肺動脈などに寄生すると、咳や運動不耐性などの症状につながることがあります。猫では、成虫が少ない場合でも幼虫に対する反応によって肺の症状が起こることがあります。
だからこそ、症状が出てから対応するよりも、感染する前から予防することが大切です。
フィラリアの予防をお考えの飼い主様へ
犬や猫と暮らしている飼い主様にとって、フィラリアは毎年考えておきたい予防の一つです。
フィラリアの生態を知ると、「なぜ蚊の季節に予防するのか」「なぜ予防薬を継続するのか」「なぜ予防前に検査をするのか」という疑問がつながります。
「うちの子には予防が必要?」
「去年、何回か薬を忘れてしまったけれど大丈夫?」
「猫もフィラリア予防をしたほうがいい?」
「室内飼育でも予防したほうがいい?」
そのような疑問がある場合は、自己判断で薬を中断したり変更したりせず、動物病院へご相談ください。
フィラリアは、感染してから治療する病気ではなく、感染する前から予防することが大切な病気です。
犬や猫のフィラリア予防についてお悩みの飼い主様は、お気軽にご相談ください。


