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飼鳥の発情コントロールが重要な理由とは?エキゾチックアニマル専門動物病院が解説
皆様こんにちは、寒くなってまいりましたが、飼い主様ならびにご家庭の動物さんたちは元気にお過ごしでしょうか?
本日は、気温とも密接に関連する飼鳥の「発情」についてお話しさせていただきます😊
当院では飼鳥の疾病についての相談件数が年々増加しています。特に、セキセイインコ・オカメインコ・文鳥・コザクラインコでは、過度な発情が原因で体調不良を起こし、卵詰まりや攻撃行動が見られるといった相談が増えているように思います。過度な発情が続くと、飼鳥の健康に重大な影響を与えるため、発情コントロールの知識が必須と言えます。逆に言うと、飼い主様が発情についての知識を正しく身につけることで、大事な家族の一員である鳥さんたちの寿命を大きく伸ばすことができるとも言えます。
発情の仕組み
飼鳥の発情は基本的に、日照時間・温度・栄養・環境刺激の四つの要因の組み合わせによって起こります。当院がある奈良県香芝市は、春と秋の日照時間の変化が大きく、屋内飼育のインコや文鳥でも外気の変化の影響を受けやすいという特徴があるため、より気をつけなければなりません。
飼鳥が発情状態になると、巣材を集めたり、吐き戻しをしたり、発情対象(飼い主の手やおもちゃ、同居鳥など)に求愛行動を取ることがあります。飼鳥が自分の体力を超えて発情を続ける(過発情)と、卵塞(卵詰まり)や低カルシウム血症を引き起こします。
発情した際に起こりやすい問題
卵塞(卵詰まり)
発情に関連する病態としては最も危険な状態と言えるのが卵詰まりです。卵がうまく排出できず卵管に詰まるとショック状態に陥り、数日中に状態が悪化する可能性があります。
栄養不足とカルシウム欠乏
発情による産卵が長期間高頻度に続くと、卵殻の形成に使われるカルシウムやその他微量元素が不足し、いわゆる骨粗鬆症に陥り簡単に骨折するような状態まで悪化する可能性があります。また、単純に発情の度に体力が奪われるため、過発情は健康寿命を大きく損なうと言えます。
過度な攻撃行動
飼鳥が縄張り意識を強め、飼い主の手を噛むなど攻撃行動が増える可能性があり、日常生活を送る上で支障が出る場合があります。
では、発情を抑制するためには具体的にどうすれば良いのでしょうか?以下に解説していきます。
日照時間コントロールの重要性
最も来院羽数が多いセキセイインコさんを例に挙げると、発情を抑制するためには日照時間を10時間以内にすることが効果的であるとされています。意外と多い間違いとして、部屋の明かりをつけたまま生活し飼鳥が14時間以上光を浴びてしまい、結果として発情してしまうケースがあります。また、生活リズムの乱れにより免疫が低下し、発情以外の疾病の罹患リスクも大きく上昇するとされています。対策としては遮光の覆い布を使い、毎日決まった時間に暗くしましょう(ただし鳥種によって対処が異なる場合がありますので適宜ご相談ください)。
ケージ環境の見直し
巣材となる紙類や暗く狭い場所(巣箱など)は発情を促すため、撤去した方が良い場合があります。ティッシュ箱や布のすき間を好むインコさんは多く、またケージ内のおもちゃが多すぎると刺激が過剰になり発情が促進されることがあります。おもちゃは3個程度に絞り、月に1回交換すると効果があるとされています。
栄養管理
高カロリーフードは発情を誘発しやすいとされています。特に皮付きシードを多く与える家庭では栄養バランスが損なわれ、発情トラブルが多い印象があります。ペレットは栄養バランスが安定しているため最も推奨されますが、もしペレットだけでは食いつきが悪い場合は主食はペレット70%、シード30%以下を目指しましょう。
肥満は万病の元、ただし過度なダイエットも命の危険があります。鳥さんの食事管理はその子によって異なり、複雑化する傾向がありますのでぜひ獣医師にご相談ください。
スキンシップの適切な距離感
飼い主の手や肩を巣と認識する鳥は多いです。過発情の場合は頭を優しくなでる程度の接触にとどめ、背中や腰を触らないよう注意が必要です。過度なスキンシップは発情の直接的な原因となるため、特に発情対象と思われる飼い主様はスキンシップを控えることが重要になります。
飼鳥の発情コントロールがうまくいかない場合
当院では、上記の発情抑制方法を試しても過発情が収まらない場合、飼い主様と相談の上通院によるホルモン治療を行います。また、必要に応じて卵の有無や骨密度の確認するためにレントゲン検査を行うこともあります。ホルモン治療には注射、内服薬と大きく分けて2種類ありその子の状態によって使い分けますが、ホルモン治療だけでは改善しないこともあり、並行して根本的な原因の解消を目指す必要があります。
発情コントロールのメリットまとめ
メリットは大きく分けて4つあります。
1つ目のメリットは、卵詰まりのリスク低減。当院でも卵詰まりの相談は年間50件以上あります。
2つ目のメリットは、発情による攻撃行動の減少。
3つ目のメリットは、栄養不足の予防。特にカルシウム不足は骨折リスクを高め、発情を抑えると体への負担が減ります。
4つ目のメリットは、長期的な健康維持。健康寿命が長くなるケースが多いです。
飼鳥の発情に悩む飼い主様へ|動物病院として伝えたいこと
飼鳥の発情は、飼育環境・栄養・日照時間の管理で改善できるとはいえ、要因が複雑化し治療が非常に難しいことも多いです。上記に挙げた方法は基礎的なもので、今おうちの鳥さんの過発情に悩んでいらっしゃる飼い主様には、是非一度ご来院頂き、二人三脚で問題解決へ向けてご相談に乗れればと思います。


