皆様こんにちは☺️急に肌寒い季節となりましたがいかがお過ごしでしょうか?🥶
今回は当院でもよく見かける、うさぎの鬱滞についてお話させていただきます。一緒に過ごされるご家族の方にとっては切っても切れない病気ですので、ご一読いただけますと幸いです🐰
目次
― うさぎの「鬱滞(うったい)」に注意!早期発見と動物病院での適切な処置が命を守ります ―
はじめに、うさぎは非常にデリケートな動物です。
その中でも「鬱滞(うったい)」と呼ばれる消化管の動きが止まる病気は、放置すれば命に関わる重大な状態となります。
「昨日まで元気だったのに、急に食べなくなった」「糞が小さくなっている」――そんなときはすぐに動物病院で診察を受ける必要があります。
本記事では動物病院の立場から、原因・症状・治療・予防まで詳しく解説します。
うさぎの鬱滞とは?命に関わる「消化管鬱滞」という病気
うさぎの鬱滞とは、胃や腸などの消化管の動きが低下または停止し、食べ物やガスが滞る状態を指します。
人間でいえば「腸閉塞」に近い状態であり、早期に治療を行わなければ、ガス膨張による痛みやショック、肝臓の障害を引き起こすことがあります。
当院でも、毎週のように「うさぎがご飯を食べない」「糞が出ない」という相談が寄せられます。
そのうち半数以上は、この鬱滞が原因です。
うさぎの鬱滞は時間との勝負です。
数時間の遅れが命に関わることもあるため、異変を感じたら早めの受診が何より大切です。
鬱滞の主な原因
うさぎの鬱滞は、いくつかの要因が重なって起こります。
不適切な食事(繊維不足)
最も多い原因は、食物繊維の不足です。
うさぎの腸は繊維で動いており、牧草を中心とした食事が必要です。
ペレットやおやつを主食にしてしまうと、腸の動きが鈍くなり、ガスが溜まりやすくなります。
特にティモシーやオーツヘイなど、1日体重の3〜5%量の牧草摂取が理想とされています。
ストレス
うさぎはストレスに非常に弱い動物です。
環境の変化、大きな音、温度の急変、知らない人の接触などがきっかけで、胃腸の動きが止まることがあります。
特に引っ越しや多頭飼育時のトラブル後に発症するケースも少なくありません。
歯のトラブル
歯の噛み合わせ異常(不正咬合)も鬱滞の大きな原因です。
痛みで食欲が落ちる→食べない→腸が動かない→ガスが溜まる、という悪循環になります。
歯の状態は外から見てもわかりにくいため、定期的な歯科検診が重要です。
水分不足や運動不足
水を飲まない、ケージに閉じこもり運動しないうさぎは、腸の動きが鈍くなります。
常に新鮮な水を用意し、毎日15分以上は体を動かす時間を確保しましょう。
鬱滞の症状
うさぎの鬱滞は、初期症状を見逃さないことが何より大切です。
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食べる量が減る、または食べない
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糞が小さくなる、形が不揃いになる
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糞が全く出ない
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お腹が張って苦しそうにしている
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元気がなく、じっとしている
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歯ぎしりをする(痛みのサイン)
これらの症状が見られた場合はすぐに動物病院へ。
自然に治ることはほとんどなく、放置すると腸内ガスの圧力で臓器障害やショックを起こすことがあり死亡につながることもあります。
鬱滞を放置した場合の危険性
うさぎの鬱滞は、進行すると以下のような深刻な状態に至ります。
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胃内ガス膨張による強い腹痛
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脱水と電解質バランスの崩れ
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肝臓脂肪変性(食べないことによる代謝障害)
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ショック症状による死亡
特に、24時間以上食べていない場合は危険信号です。
この段階では点滴や注射など、動物病院での積極的な処置が必要になります。
動物病院で行う鬱滞の治療
うさぎの鬱滞の治療は、症状の重さによって異なります。当院では以下のようなステップで治療を行っています。
① 診察
まずは飼い主様へのご自宅での様子(いつからご飯を食べていないのか、便がどのくらい出ているのかなど)を問診し、腹部の触診に加え、状況に応じてレントゲン等でガスの有無を確認します。
腸の動きや胃の内容物の状態を観察し、歯のチェックも合わせて行います。
② 薬物治療
腸の動きを促進する薬(消化管運動促進剤)、痛み止め、整腸剤などを組み合わせて投与します。(消化管の張りが強い場合は消化管運動促進剤が使えない場合もあります)
また、脱水がある場合は点滴で体液のバランスを整えます。1回の点滴では脱水が改善しきらないこともあるため数日に渡って点滴が必要になるケースもあります。
③ 栄養補助
強制給餌(Critical Careなど)を行い、腸に食物を流すことで再び動きを促します。
この処置が早ければ早いほど、回復のスピードも早くなります。
④ 原因治療
歯が原因の場合は歯科処置、ストレスが原因の場合は環境改善を提案します。
根本原因を取り除くことで、再発を防ぐことができます。
自宅でできる鬱滞の予防法
動物病院での治療が必要になる前に、日常的なケアで予防することが可能です。
牧草中心の食事管理
ペレットよりも牧草をメインにし、嗜好性の高いオーツヘイやチモシーを混ぜて与えましょう。
おやつは果物やグラノーラではなく、乾燥野菜など繊維の多いものを選ぶのがポイントです。
ストレスの少ない環境づくり
テレビの音量、掃除機の音、人の出入りなど、うさぎにとって大きな刺激になる環境は避けましょう。
ケージの位置は静かで風通しのよい場所が最適です。
適度な運動
1日15〜30分はケージから出してあげ、自由に動かせる時間を作ることで腸の動きが活発になります。
定期検診の重要性
うさぎは我慢強く、症状を隠す動物です。
半年に1回の健康診断や歯科チェックを行うことで、早期発見・早期治療が可能になります。
飼い主様へのメッセージ
うさぎの鬱滞は「気づいたときには重症化している」ことが多い病気です。
しかし、早めに異変に気づき、動物病院で適切な処置を受ければ、多くのうさぎが回復します。
当院では、消化器疾患の治療経験が豊富で、うさぎ専用の設備も整えています。
もし「少し食欲が落ちた」「糞が小さい」と感じたら、その段階で受診してください。
数日様子を見てから来院されたうさぎでは、状態が悪化し、入院・集中治療が必要になった例もあります。
「1日でも早く病院へ」――これが何よりの鉄則です。
それが、うさぎの命を守る第一歩です。
まとめ
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鬱滞はうさぎにとって命に関わる病気
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食欲低下や糞の変化に早く気づくことが重要
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動物病院での点滴・投薬・強制給餌が回復の鍵
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牧草中心の食生活とストレス対策が再発防止に有効
うさぎの消化管鬱滞では病院での対処が一刻を争うケースもあります。
具合が悪い?鬱滞かな?と思われたらできるだけ早めのご受診をお勧め致します。
当院は完全予約制となりますが、緊急状態が疑われる場合はご案内可能な場合もありますので、まずはお電話でのご相談もお待ちしております☎️


