香芝市にある花咲く動物病院のブログ

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猫の知覚過敏症候群



 

猫の知覚過敏症候群(FHS)とは|症状・原因・診断・治療を獣医師が解説

 

 

 

香芝市近隣にお住いの猫ちゃんの飼い主様へ。まだまだ暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか😊

本日は猫の知覚過敏症候群(FHS)についてご紹介させていただこうと思います🐈

知覚過敏症候群と聞いてもピンとこられない方も多いのではないでしょうか?

背中の皮膚がピクピク動く行動、突然の走り回り、尾への自己咬傷などの症状が見られる場合は、猫の知覚過敏症候群の可能性があります。適切な治療と生活環境の調整で多くの猫が改善しますが、原因は複合的であり、診断は除外診断が基本となるため、粘り強い治療と通院が必要になる場合もあります😥

以下、項目ごとに説明させていただきますので、おうちの愛猫さんをよく観察しながら一緒に学んでいきましょう!

 

 

猫の知覚過敏症候群とは

猫の知覚過敏症候群とは、背中から尾の付け根にかけて皮膚が波打つように動く症状、強い違和感、過剰なグルーミング、突然の走行、尾への自己咬傷などを示す臨床的な症候群です。

症状は発作的に出現し、短時間で消失する傾向があります。若齢から中年の猫で見られ、純血種での報告も存在します。

背中の皮膚の波打ちやピクピクとした収縮が見られる場合は、早期相談をお勧めします。

主な症状とチェックポイント

猫の知覚過敏症候群でよく見られる症状を以下で整理していきましょう。複数の症状が当てはまり、またその症状が反復する場合は受診をお勧めします。

観察されやすい症状

  • 背中の皮膚がピクピク動く、背毛が波打つ
  • 尾を追いかけて噛む、尾の付け根を激しく舐める
  • 過剰な毛づくろいによる脱毛、紅斑や掻破痕の出現
  • 突然の走り回りや飛び跳ね、接触刺激への過敏反応、興奮による開口呼吸
  • 背中や腰部への接触を強く嫌がり、攻撃行動が一過性に増える
  • 発作様の症状が数秒から数分続く

重症化のサイン

  • 尾や腰部の自己咬傷による出血や潰瘍
  • 持続的な不穏行動と睡眠リズムの破綻
  • 食欲低下や活動性低下などの全身症状

考えられる原因と発症メカニズム

猫の知覚過敏症候群として重要なのは、単一の原因は確立されていないということです。原因不明にも関わらず共通の病態(症状など)を示すため、「症候群」と表現されます。複数の因子が重なり、感覚過敏や行動変化が出現すると考えられているため、原因の特定がしばしば困難になることがあります。

以下に考えられる要因を挙げていきましょう。

神経学的要因

てんかん性素因、痛覚過敏、末梢神経の異常興奮などが発作性の振る舞いを引き起こすことがあります。

精神・環境要因

ストレス、予測不能な刺激、運動不足、遊びの不足などが行動変化を助長させることがあります。

整形外科的要因

脊椎疾患、椎間板障害、関節炎などの疼痛が隠れている場合、しばしば発作様の症状として気づくことがあります。

皮膚疾患・寄生虫要因

ノミアレルギー性皮膚炎、ダニ寄生、一次性アレルギーによる痒みが皮膚の違和感を誘発することがあります。

診断の進め方

猫の知覚過敏症候群は除外診断で原因を特定していく他なく、正確で地道な診断と治療が不可欠です。初診では病歴聴取、症状観察、身体検査を詳細に行います。ですが、この病気では特に細かい症状のニュアンスが伝わりにくい場合があります。その際、発症時の動画などをご持参いただくと診断に非常に有益ですので、可能であれば発症した猫ちゃんの様子を冷静に動画に撮っていただくことが重要となります。

除外すべき主な疾患

  • 外部寄生虫症、アレルギー性皮膚炎、細菌性皮膚炎
  • 関節炎、脊椎疾患、椎間板疾患
  • てんかん、末梢神経障害、中枢神経疾患
  • 甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患
  • 心臓疾患

推奨される検査

  • 皮膚検査(掻爬試験、セロハンテープ法、真菌培養検査)
  • 血液検査(甲状腺ホルモン測定を含む)
  • 尿検査
  • レントゲン検査、必要に応じて超音波検査(脊椎疾患などの除外)
  • 神経症状が強い場合は画像診断(CTやMRI)や脳波測定

治療と生活環境の整え方

原因疾患が特定できた場合、まずそれに対しての治療を行います。治療が完了しても改善が見られなかった場合は他の原因疾患を探索したり、ストレスを与えないような根本的な環境改善・行動治療を試していきます。治療は症状の強さ、併発疾患、飼育環境を考慮して個別に設計していきます。獣医師と二人三脚で複数の戦略を組み合わせ、粘り強く治療していくことが重要となってきます。

環境調整と行動治療

  • 生活リズムの安定や静かな休息スペースの確保

猫ちゃんは日常のルーティンを最も重視します。飼い主の生活リズムが急に変わったり、新たな家族が増えたことで自身のルーティンが揺るがされると、大きなストレスを感じることがあります。また、過度なスキンシップも逆効果となることがあるため、一人になれる時間・場所を確保してあげることが大事です。

  • 狩猟本能に合致した遊びの導入

遊ぶ時間を決めて、猫が満足するまでしっかり遊んであげることが大事です。

  • 過度な触刺激の回避・背中や腰部への撫で方の見直し

猫ちゃんの性格にも大きく左右されますが、触られるのが苦手な猫ちゃんに関しては無理に触らないことも一つの手です。しかし一方で、あらゆる病気の早期発見という観点では、やはりある程度人間とのスキンシップには慣れさせてあげたいものです。

  • ノミ・ダニ対策と清潔な寝具管理

たとえ通年のノミダニ予防をしっかり行っていても、猫ちゃんのおうちにノミダニの死骸やハウスダストなどが多く残っていると、それが痒みの原因になることがあるためこまめな掃除が非常に重要となってきます。

薬物療法(必要時のみ)

  • 抗てんかん薬の使用の検討
  • 抗不安薬や三環系抗うつ薬の慎重な導入
  • 不安を和らげるサプリメントの使用
  • 消炎鎮痛薬や鎮痒薬の使用(原因が痛みや痒みにある場合)

薬剤選択は安全性と有効性のバランスを重視します。また、対症療法的な治療により真の原因疾患を覆い隠してしまうこともあるため、薬物治療の開始は獣医師と相談の上慎重に決定します。また、再発の恐れや副作用が強く出たりすることもあるため、自己判断での投薬中止や用量変更は推奨しません。

自宅でできる観察と対策

自宅での適切な観察と記録は診断と治療内容の決定に非常に役立ちます。以下のポイントを参考にしてください。

観察のポイント

  • 症状の出現時間、持続時間、誘因の記録
  • 発作様症状発現時の動画撮影
  • 皮膚の脱毛、紅斑、掻破痕の確認
  • 触ると嫌がる身体の箇所の把握
  • 食欲、活動量、睡眠の変化の把握

家庭での工夫

  • 見通しの良いスケジュール管理と静かな休息環境
  • 高低差を活用したキャットタワーや知育玩具の活用
  • 背中や腰部への触れ方の丁寧な配慮

市販サプリメントの導入前には主治医に相談してください。既存治療や併用薬との相互作用の確認が必要です。

よくある質問

受診前によく寄せられる質問をまとめました。個別の状況に応じた判断には診察が必要です。

猫の知覚過敏症候群は自然に治りますか?

軽症例で一過性に落ち着く場合がありますが、再発や悪化の可能性もあるため、定期的な経過観察をお勧めします。

動画が撮れない場合はどうすれば良いですか?

症状の頻度表、発生時刻、前後の出来事を時系列で記録してください。客観的なメモが診断に役立ちます。

去勢・避妊手術は影響しますか?

直接的な因果関係は明確ではありません。

どのくらいの期間で改善が期待できますか?

明確に原因疾患が認められない場合、環境調整などにより1ヶ月前後で改善がみられる例が多いです。薬物療法を併用する場合は段階的に評価します。

受診のご案内

花咲く動物病院は、香芝市を中心に大和高田市、広陵町、葛城市、王寺町などの近隣地域のみならず、遠方からのご来院にも対応いたします。猫の知覚過敏症候群の診断と治療に関する相談も随時受け付けております。

本記事は一般的な情報提供を目的とします。個別の診断と治療は獣医師の診察に基づきます。

 

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